私は詩を書く
心の奥底
その下のもっと下
体の奥底に流れている
渦まいている
黒い静かな流れに乗せて
私は詩を語る
古い夢が干からび
新しい夢が変形していく体の奥底では
昨日見た夢もサングラスをかけて
怯えながら審判を待つ
三途の川の渡し守のカロンは
六文銭を投げ出して
薔薇の香を大量に焚き
夢たちの不安を一つ一つ叩き割っている
川が流れ出す
白い波が立つ
白い肌をした若い女の夢が
激流に吸い込まれていく
泡の中に沈んでいくヴィーナス
美は生まれたのか 葬られたのか
地獄の渡し守のカロンは凱歌を挙げ
夢のかけらたちを積んで船出する
行く先は地獄ではないらしい
地獄ですらない忘却の淵
夢たち 詩たち
天上の歌をうたう少年たち
幼き友情の絆をうたう歓びの声
高き空で叫ぶ夢
体のあちこちに流れる薔薇のインセンス
私の心の上澄みの
空気よりうすい部分にひびきわたる
いくつもの私がいて
いくつもの夢がある
いくつもの私がいて
いくつもの詩がある
こんなふうに私は
生まれたての詩を書き留めている
立ち止まることはない
振り返ることはない
私は詩を書く
詩を書く間 私は生きているから
ペン先から生まれる言葉
それは全て喜び
悲しいと書いても淋しいと書いても
それはほとばしる喜び
私の心を流れる清冽な水しぶき
右腕が左腕の知らない誰かを知っている
左腕は右腕の知らないため息を知っている
右腕と左腕は仲がわるい
肋骨はいつも胸をいためている
淡い光が射してきた
曇りのち晴れ
今日見た夢は明日はもう思い出
いつまでもどこまでも
私の見る夢が続く
(20.5.27.)
