2008年06月30日

井戸を掘る


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   井戸を掘る

 

 

梅雨の晴れ間の青い空も
重たく茂ったプラタナスの広い葉も
私に井戸を掘らせる

街頭に吹く白い風も
太陽を反射するビルの高い窓も
私に私の奥底に井戸を掘らせる

井戸を掘る
私はただ掘り続ける
言葉という道具で
心という道具で
行動という道具で
そして無という道具で

私の大地は乾いている
植物の少ない荒野原
私は井戸を掘り続ける
こんこんと泉が湧き出るまで

過去を振り返るのはやめよう
他人(ひと)に左右されるのはやめよう
激情や衝動に流されるのはやめよう
私はただ
ひたすらに掘り続ける

新しい
心を動かすものに出会ったら
私はそれで井戸を掘ろう
井戸を掘るのに役立たないものに
かかずらうのはやめよう
少し掘れば少し
多く掘れば多く
私は私の泉に近づくことができる

井戸は私を潤すだけでなく
私のまわりの人々を潤す
私のまわりの世界すべてを潤す
でも私の井戸を掘ることが出来るのは私だけ
ただひたすらに掘り続けなければならない

小石を拾い
土をかきあげ
釣瓶で土を引っ張り上げ
私はただ奥へ、その下へと向かう

水脈に出会ったら
言葉が流れ出すだろう
思想が流れ出すだろう
思考が氾濫するだろう
そして多くの人々の心が潤されるだろう

私は夢見る
そして掘る
言葉という道具で
思いという道具で
詩という道具で
そして 無という道具で

 

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2008年06月23日

虚(そら)に


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   虚(そら)に

 

言葉を残して
消えていく幻
それを人は
詩という言葉で呼ぶ

ありえない
という言葉が
残響となって
青虚(あおぞら)に木霊する
聞いたことのない
歌を歌うきみが
太陽の方向に影をのばして
歩いている

きみは
太陽よりも強い光に照らされて
詩をこの世に送り出した
何も無い世界から
何かある世界へ
なかったものを
ないまま
送り出した

感情とか心とか知恵とか思い出とか
本当はないものを
ないまま
送り出すのは言葉
色も響きも
与えて
ないものの豊かさでこの世を満たす

きみは青葉の蔭で
パンのフルートを吹く
木に漏れる日の光
それはそのまま
きみが生み出した詩

ないものを夢み
ないものを思い出し
ないものを語り
ないものを愛する

ないから
世界を美しくする
世界を深くする
のは
ないものをないまま
動かす力

詩の力
太陽よりも強い

     (20.6.23.夏至の二日後の晴れ間に)

posted by kous37 at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年06月16日

空にある


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   空にある

 

青空に花が咲く
どこからともなく立ちあらわれる
五色の雲が湧く
日の光が踊る

夢を見る夜明け
夢の続きの午前中
白日夢を見る猫の瞳
誰そ彼時に見る逢魔が影

知らぬ間に
現実という名の夢を四六時中見続けてしまった
青い葉陰でうつむくコロボックル
誰も私に気がつかない

白い夢を記す青い万年筆が
見える文字の向こうに見えない文字をつづる
見えない文字を読んでもらおうとして
詩をつれてくる

詩は風を吹かせる
空気のない街に
私の鉛のような手足が一歩一歩前に進むとき
世界はソドムとゴモラのように滅び去る

電信柱がどこまでも伸びていく
世界は一本の電信柱になって
人の意識の闇や光明の中を
どこまでも伸びていく

空にある
ぼくも世界も空にある

 

             (20.6.13.)

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2008年06月09日

バラの弾丸


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   バラの弾丸

 

 

きらきら輝くバラの弾丸を
空気銃に詰めて放つ
バラの弾丸は
君の心に突き刺さる
そこからバラは目覚めて
君の心にトゲつきの花を咲かせる
君の笑顔がトゲだらけの美しい花になったら
僕は指を痛め胸を傷つけながら君を抱く
バラの花に降りた朝露の雫を僕は飲む
君は朝の香りを吸い取られて
夢幻の高原の朝に溜息を咲かせる
ああ ああ
高原のやせた土に咲く真紅のバラ
僕はバラの垣根の横に立ち
うつろい行く空の雷雲を眺める
晴れたかと思うとすぐに深い霧が押し寄せ
清冽な水蒸気が僕の心を浸す
気体の水に洗われる僕の心
バラの君の真紅の花弁に水が降りる

posted by kous37 at 01:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年06月03日

薔薇の季節


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   薔薇の季節

 

薔薇の季節が来たけれども
そこここに アイリスばかりが咲いている

黄色い花
白い花弁
紫色の鶏冠や耳朶のような
誇らかなアイリスばかりが咲いている

あの下町の薔薇屋敷の
蔓薔薇は今頃満開なのだろう
私は田舎町でアイリスに埋もれ
フランスギクと矢車草のベッドに眠っている

梅雨近い気だるい初夏の午後
誰も聞いていないチャイコフスキーが流れ
何度も読んだコミック雑誌のそばに
しまい忘れたストーブ用のライターが落ちている

初夏が来たら
やりたいことはたくさんあったはずなのに
この気だるい午後
やりたいことも前に進むことも
全てが吸収されていく

空気はひんやりとし始め
窓の外には遠い木立に風の抜ける音
その遙か向こうから風に吹き消されそうな踏切の音
私の肘のところにそっぽを向いた目覚まし時計が
ちくたくと独り言を言い続けている

部屋を取り囲む大きな自然
ひだるい午後
ギイギイと鳴く鳥の声
私の午後ははじまりもなく終わりもない
壁に貼ったロートレックのポスターの
酌婦がこちらを振り向きざまふっと微笑む

薔薇の季節が来たけれども
アイリスばかりが咲いている
私の初夏は夢見たような初夏ではなかった
この初夏に
私の声を背骨に響かせて
私はアイリスの詩を読もう
薔薇の詩を読むはずだった私の
アイリスの詩を読もう

              (20.5.28.)

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2008年06月02日

小さな蜜柑


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   小さな蜜柑

掌に乗せて息を吹け
小さな蜜柑
小さな食慾と
小さな性慾の結晶した
小さな蜜柑

遠くで蛤の会話がきこえる
海の匂いが漂ってくる
碁石の滑らかさ
胡粉の美しさ
生きた蛤の海の匂い

小さな蜜柑
私の小さなまんまるの慾望
あなたに届け
あなたの慾望も小さく
呼び起こすように

蛤たちは眠っている
小さな息をしている
大きな慾望に眠りついて
安心した寝息を吐いている

小さな蜜柑が並んで
靖国通りを歩いている
太った蛤は観光バスの
屋上で傘を振り回している

空には真っ赤なミニトマトが
オレンジの種子(たね)を撒いていた

               (20.6.1.)

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